目 次
前文
第1章 総則(第 1 条ー第8条)
第2章 男女平等と多様性を尊重する社会の推進に関する施策(第9条ー第 13 条) 第3章 男女平等と多様性を尊重する社会の推進に関する体制(第 14 条・第 15 条) 第4章 雑則(第 16 条・第 17 条)
附則
日本国憲法に定める個人の尊重及び法の下の平等の理念に基づき、性別、人種、年 齢や障害の有無などにより差別されることなく、人が人として尊重され、誰もが自分の 能力を活かしていきいきと生きることができる差別のない社会を実現することは、私た ち区民共通の願いである。
本区では、これまで、男女平等社会の実現を目指して、男女共同参画行動計画を策 定し、推進することにより、男女の人権の尊重に積極的に取り組んできた。
しかし、男女に関わる問題においては、今なお、性別による固定的な役割分担意識 とそれに基づく制度や慣行が存在すること、一部の性的指向のある者及び性同一性障害 者等の性的少数者に対する理解が足りないことなど、多くの課題が残されている。
日本には、他者を思いやり、尊重し、互いに助け合って生活する伝統と多様な文化 を受け入れ発展してきた歴史があり、とりわけ渋谷のまちは、様々な個性を受け入れて きた寛容性の高いまちである。一方、現代のグローバル社会では、一人ひとりの違いが 新たな価値の創造と活力を生むことが期待されている。このため、本区では、いかなる 差別もあってはならないという人権尊重の理念と人々の多様性への理解を、区民全体で 共有できるよう積極的に広めていかなければならない。
これから本区が人権尊重のまちとして発展していくためには、渋谷のまちに係る全て の人が、性別等にとらわれず一人の人間としてその個性と能力を十分に発揮し、社会的 責任を分かち合い、ともにあらゆる分野に参画できる社会を実現しなければならない。
よって、ここに、区、区民及び事業者が、それぞれの責務を果たし、協働して、男 女の別を超えて多様な個人を尊重し合う社会の実現を図り、もって豊かで安心して生活 できる成熟した地域社会をつくることを決意し、この条例を制定する。
第 1 章 総則
(目的)
第 1 条 この条例は、男女平等と多様性を尊重する社会の推進に関して、基本理念を定 め、区、区民及び事業者の責務を明らかにするとともに、区の施策の基本的事項を 定めることにより、その施策を総合的かつ計画的に推進し、もって多様な個人を尊 重し合う社会の実現を図ることを目的とする。
(定義)
第 2 条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定め るところによる。
(1)男女平等と多様性を尊重する社会 性別等にとらわれず、多様な個人が尊重さ れ、全ての人がその個性と能力を発揮し、社会のあらゆる分野に参画し、責任を 分かち合う社会をいう。
(2)区民 区内に住所を有する者、区内の事業所又は事務所に勤務する者及び区内 の学校に在学する者をいう。
(3)事業者 区内において事業活動を行う法人その他の団体又は個人をいう。
(4)ドメスティック・バイオレンス等 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護 等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第1項に規定する配偶者から の暴力及びストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号) 第 2 条第2項に規定するストーカー行為をいう。
(5)ハラスメント 他者に対する発言や行動等が、本人の意図に関係なく、相手や 周囲の者を不快にさせ、尊厳を傷つけ、不利益を与え、又は脅威を与えることを いう。
(6)性的指向 人の恋愛や性愛がどういう対象に向かうかを示す指向(異性に向か う異性愛、同性に向かう同性愛及び男女両方に向かう両性愛並びにいかなる他者 も恋愛や性愛の対象としない無性愛)をいう。
(7)性的少数者 同性愛者、両性愛者及び無性愛者である者並びに性同一性障害を 含め性別違和がある者をいう。
(8)パートナーシップ 男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備える戸籍上の 性別が同一である二者間の社会生活関係をいう。
(男女の人権の尊重)
第 3 条 区は、次に掲げる事項が実現し、かつ、維持されるように、男女の人権を尊重する社会を推進する。
(1)性別による差別的な取扱い、ドメスティック・バイオレンス等が根絶され、男女 が個人として平等に尊重されること。
(2)男女が、性別による固定的な役割分担にとらわれることなく、その個性と能力を 十分に発揮し、自己の意思と責任により多様な生き方を選択できること。
(3)男女が、社会の対等な構成員として、社会のあらゆる分野における活動方針の立 案及び決定に参画する機会が確保されること。
(4)学校教育、生涯学習その他の教育の場において、男女平等意識の形成に向けた取 組が行われること。
(5)男女が、相互の協力と社会の支援の下に、家庭生活、職場及び地域における活動 の調和のとれた生活を営むことができること。
(6)男女が、妊娠、出産等に関して互いに理解を深め、尊重し合い、ともに生涯にわ たり健康な生活を営むことができること。
(7)国際社会及び国内における男女平等参画に係る取組を積極的に理解し、推進する こと。
(性的少数者の人権の尊重)
第 4 条 区は、次に掲げる事項が実現し、かつ、維持されるように、性的少数者の人権 を尊重する社会を推進する。
(1)性的少数者に対する社会的な偏見及び差別をなくし、性的少数者が、個人として 尊重されること。
(2)性的少数者が、社会的偏見及び差別意識にとらわれることなく、その個性と能力 を十分に発揮し、自らの意思と責任により多様な生き方を選択できること。
(3)学校教育、生涯学習その他の教育の場において、性的少数者に対する理解を深め、 当事者に対する具体的な対応を行うなどの取組がされること。
(4)国際社会及び国内における性的少数者に対する理解を深めるための取組を積極的 に理解し、推進すること。
(区及び公共的団体等の責務)
第 5 条 区は、前二条に規定する理念に基づき、男女平等と多様性を尊重する社会を推 進する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。
2 区は、男女平等と多様性を尊重する社会を推進するに当たり、区民、事業者、国及 び他の地方公共団体その他関係団体と協働するものとする。 3 国、他の地方公共団体、法令により公務に従事する職員とみなされる当該職員の属 する団体、その他公共的団体(以下「公共的団体等」という。)の渋谷区内における 事業所及び事務所は、区と協働し、男女平等と多様性を尊重する社会を推進するも のとする。
(区民の責務)
第6条 区民は、男女平等と多様性を尊重する社会について理解を深め、社会のあらゆ る分野の活動において、これを実現するよう努めるものとする。
2 区民は、区が実施する男女平等と多様性を尊重する社会を推進する施策に協力する よう努めるものとする。
(事業者の責務)
第7条 事業者は、男女平等と多様性を尊重する社会について理解を深めるとともに、 区が実施する男女平等と多様性を尊重する社会を推進する施策に協力するよう努め るものとする。
2 事業者は、男女平等と多様性を尊重する社会を推進するため、採用、待遇、昇進、 賃金等における就業条件の整備において、この条例の趣旨を遵守しなければならな い。
3 事業者は、男女の別による、又は性的少数者であることによる一切の差別を行って はならない。
4 事業者は、全ての人が家庭生活、職場及び地域における活動の調和のとれた生活が 営まれるよう、職場環境の整備、長時間労働の解消等に努めるものとする。
(禁止事項)
第 8 条 何人も、区が実施する男女平等と多様性を尊重する社会を推進する施策を不当 に妨げる行為をしてはならない。
2 何人も、ドメスティック・バイオレンス等及びハラスメントをしてはならない。 3 区、区民及び事業者は、性別による固定的な役割分担の意識を助長し、若しくはこ
れを是認させる行為又は性的少数者を差別する行為をしてはならない。
第2章 男女平等と多様性を尊重する社会の推進に関する施策
(男女平等・多様性社会推進行動計画)
第9条 区は、男女平等と多様性を尊重する社会を推進する施策を総合的かつ計画的に 推進するための男女平等・多様性社会推進行動計画(以下「行動計画」という。)を策定し、これを公表するものとする。
2 区は、行動計画の策定に当たっては、あらかじめ第14条第1項に規定する渋谷区 男女平等・多様性社会推進会議の意見を聴くものとする。
3 区は、毎年1回、行動計画に基づく男女平等と多様性を尊重する社会を推進する施 策の実施状況を公表するものとする。
(区が行うパートナーシップ証明)
第10条 区長は、第 4 条に規定する理念に基づき、公序良俗に反しない限りにおいて、 パートナーシップに関する証明(以下「パートナーシップ証明」という。)をするこ とができる。
2 区長は、前項のパートナーシップ証明を行う場合は、次の各号に掲げる事項を確認 するものとする。ただし、区長が特に理由があると認めるときは、この限りでない。
(1)当事者双方が、相互に相手方当事者を任意後見契約に関する法律(平成11年法 律第150号)第2条第3号に規定する任意後見受任者の一人とする任意後見契 約に係る公正証書を作成し、かつ、登記を行っていること。
(2)共同生活を営むに当たり、当事者間において、区規則で定める事項についての合 意契約が公正証書により交わされていること。
3 前項に定めるもののほか、パートナーシップ証明の申請手続その他必要な事項は、 区規則で定める。
第11条 区民及び事業者は、その社会活動の中で、区が行うパートナーシップ証明を 最大限配慮しなければならない。
2 区内の公共的団体等の事業所及び事務所は、業務の遂行に当たっては、区が行うパ ートナーシップ証明を十分に尊重し、公平かつ適切な対応をしなければならない。
(拠点施設)
第12条 区は、男女平等と多様性を尊重する社会を推進するため、渋谷男女平等・ダ イバーシティセンター条例(平成3年渋谷区条例第28号)第 1 条に規定する渋谷 男女平等・ダイバーシティセンターをその拠点施設とする。
2 区は、前項に規定する施設において、第15条に規定する相談又は苦情への対応の ほか、条例の趣旨を推進する事業を行うものとする。
(顕彰)
第13条 区は、男女平等と多様性を尊重する社会の推進について、顕著な功績を上げ た個人又は事業者を顕彰することができる。 第3章 男女平等と多様性を尊重する社会の推進に関する体制
(渋谷区男女平等・多様性社会推進会議)
第14条 男女平等と多様性を尊重する社会の推進について調査し、又は審議するため、
区長の附属機関として、渋谷区男女平等・多様性社会推進会議(以下「推進会議」 という。)を置く。
2 推進会議は、区長の諮問に応じ、次に掲げる事項について審議し、答申する。 (1)行動計画の策定及び評価に関する事項
(2)男女平等と多様性を尊重する社会を支える意識の形成に関する事項
(3)男女平等と多様性を尊重する社会に係る人権の尊重及び暴力の根絶に関する事
項
(4)前3号に掲げるもののほか、区長が必要と認める事項
3 推進会議は、前項に定めるもののほか、男女平等と多様性を尊重する社会の推進に 関し、必要があると認めた事項について区長に意見を述べることができる。
4 前2項に定めるもののほか、推進会議の構成及び運営について必要な事項は、区規 則で定める。
(相談及び苦情への対応)
第15条 区民及び事業者は、区長に対して、この条例及び区が実施する男女平等と多 様性を尊重する社会を推進する施策に関して相談を行い、又は苦情の申立てを行う ことができる。
2 区長は、前項の相談又は苦情の申立てがあった場合は、必要に応じて調査を行うと ともに、相談者、苦情の申立人又は相談若しくは苦情の相手方、相手方事業者等(以 下この条において「関係者」という。)に対して適切な助言又は指導を行い、当該相 談事項又は苦情の解決を支援するものとする。
3 区長は、前項の指導を受けた関係者が当該指導に従わず、この条例の目的、趣旨に 著しく反する行為を引き続き行っている場合は、推進会議の意見を聴いて、当該関 係者に対して、当該行為の是正について勧告を行うことができる。
4 区長は、関係者が前項の勧告に従わないときは、関係者名その他の事項を公表する ことができる。
第4章 雑則
(他の区条例との関係) 第16条 渋谷区営住宅条例(平成9年渋谷区条例第40号)及び渋谷区区民住宅条例 (平成 8 年渋谷区条例第27号)その他区条例の規定の適用に当たっては、この条 例の趣旨を尊重しなければならない。
(委任)
第17条 この条例の施行について必要な事項は、区規則で定める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成27年4月1日から施行する。ただし、第10条及び第11条の 規定は、この条例の公布の日から起算して1年を超えない範囲内において区規則で 定める日から施行する。
(渋谷区附属機関の構成員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)
2 渋谷区附属機関の構成員の報酬及び費用弁償に関する条例(昭和29年渋谷区条例 第 8 号)の一部を次のように改正する。
別表中第38号を第39号とし、第5号から第37号までを 1 号ずつ繰り下げ、 第4号の次に次の1号を加える。
5 渋谷区男女平等・多様性社会推進会議 会長 18,000 円
委員 12,000 円
(渋谷女性センター・アイリス条例の一部改正)
3 渋谷女性センター・アイリス条例(平成3年渋谷区条例第28号)の一部を次のよ うに改正する。
題名を次のように改める。
渋谷男女平等・ダイバーシティセンター条例
第1条中「女性問題」を「男女又は性的少数者に関わる問題」に、「女性の地位向 上及び男女共同参画推進」を「男女平等と多様性を尊重する社会(性別等にとらわれ ず、多様な個人が尊重される社会をいう。)の推進」に、「渋谷女性センター・アイリ ス」を「渋谷男女平等・ダイバーシティセンター」に改め、同条に次の1項を加える。 2 センターの通称は、「アイリス」とする。
第2条第1号中「女性問題及び男女共同参画推進」を「男女平等と多様性を尊重す る社会の推進」に改め、同条第2号中「女性問題又は男女共同参画推進」を「男女平 等と多様性を尊重する社会の推進」に改め、同条第3号中「女性問題」を「性別等に関わる諸問題」に改め、同号を同条第4号とし、同条第2号の次に次の1号を加える。 (3)男女平等と多様性を尊重する社会の推進に関する自主的な活動等の支援
(渋谷区文化総合センター大和田条例の一部改正)
4 渋谷区文化総合センター大和田条例(平成22年渋谷区条例第1号)の一部を次の ように改正する。
目次中「渋谷女性センター・アイリス」を「渋谷男女平等・ダイバーシティセンタ -」に改める。
第2条第7号を次のように改める。
(7)渋谷男女平等・ダイバーシティセンター
「第7章 こもれび大和田図書館、渋谷女性センター・アイリス」を「第7章 こ もれび大和田図書館、渋谷男女平等・ダイバーシティセンター」に改める。
第48条中「渋谷女性センター・アイリスに」を「渋谷男女平等・ダイバーシティ センターに」に、「渋谷女性センター・アイリス条例」を「渋谷男女平等・ダイバー シティセンター条例」に改める。